Topics
「麹、酵母、酵素 違いってなに?」種麹メーカー、糀屋三左衛門(黒判もやし)の村井裕一郎様。noteより。
「麹、酵母、酵素 違いってなに?」種麹メーカー、糀屋三左衛門(黒判もやし)の村井裕一郎様。noteより。
「こうじ(麹)とは」
こうじ(麹)とは、米、豆、麦に麹菌(コウジカビ)を生やしたもののことです。その後の醸造過程において酵素(←あとで説明します)を供給する役割を果たしますが、塩麹や麹漬などのように、そのまま食品として食べることもあります。
ただ、ややこしいのは、麹は麹菌が生えたものなので、「麹」の働きと「麹菌」の働きが区別無く説明されがちなことです。
さて、実用上は「麹の中の麹菌が働いている」ことを「麹が働いている」と表現しちゃうこともあります。○○工務店の大工さんがビルを建てたのに、「あのビルは○○工務店が建てた」と表現しちゃうようなものですね。工務店はビルを建てられません。建てるのは大工さんです。曖昧にしがちなところですが、しっかりと区別して考えましょう。
とにもかくにも、『こうじ(麹)』=麹菌が米豆麦に生えたもの、と、理解してください。
「こうぼ(酵母)とは」
さて、酵母です。酵母は微生物の一種です。色々な種類がありますが、発酵においては、アルコールや味、香りの成分を作り出してくれます。麹菌に比べると単純な造りの微生物です。味噌、醤油、清酒、焼酎のような日本の発酵だけでなく、ワインやビールなど、幅広く発酵食品に利用されます。
カビとかキノコのように分類学として正式な分類ではなく、単細胞性の真菌類(←覚えなくて良いです)を総称、通称的に呼んでいます。なので、状況により、示す範囲が違うことがあるようです。実用上は、ビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、パン酵母など、発酵の目的に応じてそれぞれの呼称を付けています。
そして、微生物の一種ですので、生き死にがありますし、最適な環境も必要です。また、生きていくために糖など他の物質を摂取し、また、不要な物質を排出します。具体的な例で言うと、酵母が糖を摂取してアルコールを排出します。これが酵母によるアルコール発酵です。そして、酵母が糖をアルコールに変える過程でも「酵素」が道具として活躍しています。
酵素の説明は次の章でするので、最低限としては、『酵母』は『微生物の一種』と覚えておいてください。
「こうそ(酵素)とは」
さて、前段までで、「麹菌」「酵母」とも「酵素」を分泌する、道具として使う、と書いてきました。この「酵素」の作用こそが発酵の本質と考えて良いでしょう。さて、
おそらく最重要事項です。最初に言っておきます。
「酵素」は「物質」です。「酵素」は生き物ではありません。
大事なことなので2回言います
「酵素」は「物質」です。
そして、「麹」の中には、麹菌が分泌した「酵素」が一杯詰まっています。「酵母」も酵素をたくさん分泌します。我々人間も生きていく上で多数の酵素を体のあちこちから分泌して、生きていくために必要な化学反応を起こしています。『酵素』は生き物が生きていく上で欠かせない物質です。
さきほど、麹は○○工務店、麹菌が大工さん、といいました。その比喩に乗っかれば、いよいよ具体的に実際に木を切ったりするノミやトンカチ、カンナに当るものが酵素です。
微生物の働きとは酵素の働きといって過言ではないのですが、『麹菌がデンプンを糖に変える』というのは、厳密には『麹菌が分泌した酵素がデンプンを糖に変える』です。『大工さんが木を切った』は、厳密には『大工さんがノコギリで木を切った』であるようなものです。
いちいち細かくてすみません。でも、健康関係の記事によく見られる表現で、日本語として意味は通ってしまうだけに、逆に初心者にとって分りづらくなる原因な気がしているので、今日は丁寧にいきます。
そして、『酵素』は物質なので、死にません。酵素が働きを無くすことは『失活』といいます。熱い夏にノコギリが溶け曲がって使えなくなるようなものです。『酵素が生きて届く』というような表現は間違いです。百歩譲って、それはあくまでも比喩表現です。『酵素』があたかも生き物であるかのような表現が出回っていることが、ややこしさの原因の一つだと思っています。
「まとめ」
今日のところは
こうじ(麹)・・・米、豆、麦に麹菌が大量に生えたもの、食品
こうぼ(酵母)・・様々な発酵に使われる微生物の一種
こうそ(酵素)・・微生物を含む生き物が分泌する物質
「村井裕一郎」
種麹メーカーを経営しています。種麹とは、麹を造る元になる麹菌を商品化したもの。麹や発酵のこと、ビジネスのこと、日常生活のこと、色々こちらに書いていきます。2020年4月より京都芸術大学大学院。 MBA・みそソムリエ・一級ブランドマネージャー・愛知・豊橋・東三河
「株式会社ビオック」 http://www.bioc.co.jp