Topics
20歳若返る食物繊維 免疫力がアップする!健康革命
順天堂大学医学部教授 小林弘幸著
「腸を整えて心身ともに若々しく」食物繊維特化の解説書
「食物繊維を摂り腸内環境を改善するメリット」
食物繊維は、免疫力のアップ、健康な心身を育むのみならず、様々な疾患の予防やサポートに有効だと言われています。
それは、食物繊維が腸内環境を改善する鍵を握っているからです。
食物繊維を多くとる事で、腸内細菌は次のような素晴らしい働きをしてくれる事が分かっています。
・ウイルスの体内への侵入を防ぐ!「免疫力(粘膜免疫)」がアップ!
・高コレステロール、高血糖、高血圧、肥満を改善する。
・“幸せホルモン”の分泌で、毎日イキイキ暮らすことができる。
・老けない、太らない、がんになりにくい、身体を手に入れる事が可能になる。
最近、腸内環境が注目を浴びているのは、腸内環境を改善するだけで、これだけの効果をもたらす事が分かって来ているからなんです。
その腸内環境を改善する為にとても大切なのが食物繊維なんです。
食物繊維は、腸内細菌の餌となります。腸内細菌は40兆個以上あると言われていて、私たちの腸、とりわけ大腸に多く住み着いているんです。食物繊維を摂る事でそれを餌として腸内細菌が元気になり、腸内環境が改善されていきます。
その結果全身の健康が著しく改善されるのです。しかし現代人は、その食物繊維の摂取量が全く足りていないんです。
「食物繊維不足の日本人」
厚生労働省の基準にも満たないほど、現代人の食生活には、食物繊維が不足しているんです。
日本人の食物繊維の摂取量が激減しているというのは栄養学の研究者達の共通の悩みです。
1955年と比較してみると約3割減少しています。中でも穀物による食物繊維は約7割も減少しています。
洋食に偏りすぎていないか、白米ばかりを食べていないか、という所を日々チェックしていただきたいと思います。
「一気に食物繊維の量を増やしてしまう事による問題」
しかし、一気に食物繊維の量を増やしてしまう事による問題もあるのです。例えば、下剤の摂りすぎで、腸が動かなくなってしまっている場合は、普段食べ慣れていない食物繊維を大量にとってしまったりすると逆に体調が悪くなってしまう事があります。また、食べなれていない食材やサプリメントなどを急に取ると、お腹が張ってしまうという事もあるんです。
なぜ、いきなり食物繊維を摂ると体調不良やお腹の張りにつながってしまうのか?その理由は、食べなれていない「餌」に対応して発酵する腸内細菌の数が少ないから、いきなり大量に食物繊維が届いてもそれを発酵する腸内細菌が少ないと食べきれないんです。結果として発酵されない餌が腐敗してガスを発生させたりするんです。腸内細菌が餌になれて数が増えてくるまでは、少ない腸内細菌でも対応できるように、少しの量ではじめ、徐々に増やして行くという方法がお腹に優しい方法と言えます。
「発酵性食物繊維と短鎖脂肪酸」
食物繊維の中でも、ここ数年大きな注目を集めているのが発酵性食物繊維です。この発酵性食物繊維がなぜ注目を浴びているかと言うと発酵性食物繊維を摂る事で腸内細菌が短鎖脂肪酸という全身の健康を増進する物質を生成する事が出来るからです。腸内細菌は、食物繊維の中でも発酵性食物繊維を食べて短鎖脂肪酸を生成します。この短鎖脂肪酸により単純に免疫力を高めるだけでなく、老けない、太らない、タフな身体を手に入れる事が出来ると言われています。さらに、身体だけでなくメンタルにも良い影響が期待されています。
(短鎖脂肪酸)
短鎖脂肪酸とは腸内細菌が出す、身体によい働きをする酸のことで、大腸で精製されます。主なものは、酪酸、酢酸、プロピオン酸です。特にこれら3種は、全身の免疫力を高め、老化を防ぎ、肥満を防止する効果が期待できます。
短鎖脂肪酸は、私たちの全身の細胞膜にあるさ“酸”を検知するセンサー「短鎖脂肪酸受容体」に働きかけます。センサーと共に脳に伝わると食欲をコントロールします。少し食べすぎた時でも、短鎖脂肪酸が多く出れば、交換神経を刺激してエネルギー消費が増え、肥満を抑える事が出来るんです。短鎖脂肪酸が足りなくなると脂肪細胞は脂肪を取り込む事で太って行きます。また、すい臓に十分な短鎖脂肪酸が届けば、インスリンの分泌を抑える事にも繋がるんです。
腸は第二の脳と呼ばれていますが、このような形で身体に細かく指令を出しているんです。
その他にも、短鎖脂肪酸が生成される事で腸の活動が活発になり腸の粘膜のバリア機能が高まって細菌などの異物が侵入するのを防ぐ、免疫力がアップします。また、直接的に細菌や病原菌を防御すると共に免疫細胞の制御性T細胞(Tレグ細胞)を増やしてアレルギー症状を改善する効果もあります。アレルギーとは簡単に言ってしまえば“免疫細胞の暴走”です。
免疫細胞が花粉などの特定の物質に過剰にリアクションして、自分自身の細胞を攻撃してしまう事がアレルギーなんです。その際に、腸内に短鎖脂肪酸の酪酸があると暴走する免疫細胞をセーブするようにメッセージを伝えます。酪酸が腸壁を通って内側にいる免疫細胞に届くと、免疫細胞がTレグ細胞に変身します。Tレグ細胞は血流に乗って全身にいき渡り免疫細胞の暴走にブレーキをかけます。こうしてアレルギー症状が改善します。さらに短鎖脂肪酸には、ミネラルを溶かし、カルシウムや鉄の吸収率をよくするという効果や、短鎖脂肪酸の一種であるプロピオン酸が、肝臓がん細胞に増殖を抑えたという研究報告もあります。
(短鎖脂肪酸の主な働き)
・栄養を効率的に摂取し細胞のエネルギー源になる。
・腸内を弱酸性に保ち有害菌増殖を防ぐ。
・免疫細胞を活性化し免疫力を向上する。
・腸のぜん動運動を促進し便秘を改善する。
・発がん性物質の生成を抑え、大腸がんや肝臓がんなどの予防になる。
・食欲抑制作用によるダイエット効果がある。
・体内で生成されるコレステロールを減らす。
様々な良い働きをしてくれる短鎖脂肪酸ですが、しっかりと生成してもらう為にも発酵性食物繊維を摂取していく必要があるんです。
主食となる穀類、米、小麦、大麦、ライ麦、もち麦は、発酵性食物繊維です。
生成前の茶色系の食材が食物繊維を多く含みます。