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発酵日和:生麹とは? しっかり知ってしっかり活用 麹菌の力

生麹とは? 乾燥麹・糀・こうじとは違うもの? どこで買えるの? しっかり知ってしっかり活用 麹菌の力

甘酒や塩麹、醤油麹などを作ろうと思ったときに目にする「生麹」という言葉。店頭や通販のページでは、「乾燥麹」「糀」「こうじ」……といった商品名も存在しています。

これらは別のものなのでしょうか? だとしたら、どう使い分ければいいのでしょうか? そんな疑問を、一挙に解決します!

生麹とは? 「麹」関係の言葉をすっきり整理
結論から言えば、「生麹」も「麹」であることは間違いありません。

「生麹」と対になるもので、「乾燥麹」も存在します。これと比較するとわかりやすいでしょう。

・乾燥麹とは、乾燥させて扱いやすくした麹。
・生麹とは、乾燥させていない麹。

スーパーの店頭で見かけやすいのは、どちらかと言えば乾燥麹です。比較的長い期間、常温保存が可能です。

一方生麹は、常温保存は難しく、しかしその分、麹の発酵パワー(専門的には「力価」と言います)が強いのが一般的な特徴です。

つまり、基本的な麹を仕込んだ後、どう製品にしたか、という差ですね。

生麹と乾燥麹の違いについて、もう少しくわしく
「生」と「乾燥」の違いは、乾燥させているかいないか。保存期間、常温保存が可能かどうか。そして発酵パワーの差でした。
保存期間も長く常温保存がOKな乾燥麹の方が使いやすそうだけど、発酵パワーが強い生麹の方が体には良さそうだし……、どちらを選んだらいいのか迷いますよね。

違いは水分量と風味
言わずもがな、ですが、生と乾燥では水分量に違いがあります。

ではどのくらい違うのか?九州の老舗味噌メーカーのサクラみそ食品によると、

通常の生の麹だと水分は25~30%程度ですが乾燥こうじは10%以下まで落とします。
サクラみその麹(乾燥米こうじ)について② | サクラみそ食品 公式ホームページ official website より
とのことで、15〜20%程度の水分量の違いがあるようです。

通常の生のまま「米こうじ」だと「麹菌」も生きたままなので品質が安定しません。その為、水分を飛ばし麹菌を失活させる必要があります。
サクラみその麹(乾燥米こうじ)について② | サクラみそ食品 公式ホームページ official website より
水分量の少ない乾燥麹は麹菌が失活(菌が不活性化すること)していて、生麹は麹菌が生きたままなので発酵パワーが強いというのも理解できますね。
ただし、乾燥麹も菌が死滅しているわけではないので、栄養面では生麹と大きな差はないと言われていますが、乾燥麹はそのままだと硬いので、水で戻して使います。

乾燥麹の戻し方
【材料】

乾燥麹 200g
水(または50〜60℃のぬるま湯) 100〜200ml
※ぬるま湯の方がふっくらと仕上がります
①板状など固まっているタイプは、パラパラになるまで手でよくほぐす
②麹を容器に移し、水を加えて混ぜる ※製品によって乾燥度合が異なるため、様子を見ながら加えていく
③乾燥しないようにラップをかけ、1〜2時間ほどおく
④指で簡単に潰せるくらいまで柔らかくなれば完成
一般的に生麹の方が香り、風味が良いとされていますが、保存期間が短いので、すぐに使う場合は生麹、そうでない場合は乾燥麹と使い分けてもいいのではないでしょうか。

店での見分け方は?
通常、製品名、もしくはパッケージの原材料などが書いてあるラベルの部分に「米麹(乾燥麹)」などと明記してあるので、見分けやすいはずです。

この、生&乾燥が、麹の最も基本的な分類です。そのほか、同じく「こうじ」という読みで、「糀」の漢字をあてたものもあります。これは大豆や麦ではなく特にお米で造った麹を指す言葉で、「麹」と同じものと思っていただいて大丈夫です。

さらに、「板麹」「バラ麹」という言葉もあります。お米が固まって板のようになっているのが板麹、お米の粒がバラバラとして固まっていないのがバラ麹。わかりやすいですね。これらは主に製法の違いがかたちになって表れたものです。厳密には細かな使い分けはあると思いますが、同じ「麹」だと考えて問題ありません。麹屋さんのこだわりが、こうしたバリエーションを生んでいます。

そもそも麹とは? 仕組みを知るともっと楽しい発酵食
麹とは、お米に麹菌を合わせ繁殖させたものです。

麹菌は、自らが持つ「酵素」で、炭水化物を糖類に、タンパク質をアミノ酸に変えていきます。結果として、お米や、そのほかの合わせる食材の味を変化させたり、人体に吸収されやすくしてくれたり、というわけです。

麹菌については、下記のページで詳しく解説しています。

米麹とは? 日本の食文化を支える麹菌が生み出す「発酵の素」

ちなみに、麹菌が持つ「酵素」とは、専門の「酵素学」という学問の分野があるほど奥が深いものです。人間はもちろん、生き物の体では、無数の酵素が働いています。あらゆる生命活動の土台になっているもの、と言うことができます。

一般のご家庭では、この麹をもとに塩麹や醤油麹、甘酒、また自家製の味噌などが作られています。一方醸造メーカーでは、醤油や味噌、また日本酒などのもとにもなります。

最も一般的なのはお米の麹ですが、麦・大麦や大豆の麹もあります。米麹は味噌、日本酒、甘酒などになります。麦麹と豆麹(大豆麹)は、醤油、味噌が代表的な食品でしょうか。

生麹の使い方
生麹と言っても、特に変わった使い方があるわけではありません。

ただ、レシピによっては、扱いやすい乾燥麹ではなく、生麹を指定していることもあります。作りたいものに合わせて選ぶようにしましょう。

ご家庭で生麹を使う際に、最もポピュラーなのは、甘酒でしょうか。

飲む点滴、などとも呼ばれるほど栄養豊富で、温めても冷やしても、また何かと割って飲んでもおいしい……とうれしいことずくめの伝統飲料ですね。

発酵日和にも登場していただいている、東京農業大学の前橋健二教授は、甘酒を砂糖の代わりにすることをお勧めしています。

『砂糖の代わりに糀甘酒を使うという提案』前橋健二 あまこようこ著 アスコム

砂糖と比べ、甘酒の栄養は「約60倍」ということで、編集部員ももちろん実践中です。その栄養成分の特徴はもちろん、甘酒を使ったお料理のレシピもたくさん掲載されています。

また、発酵日和でも、甘酒を特集しています。

米麹甘酒・糀甘酒の作り方、健康効果を知って、毎日おいしく健やかに+米麹甘酒を使ったレシピ

甘酒
そのほか、塩麹、醤油麹も簡単に作れて、発酵食品の栄養を取り入れることができる優れものです。

醤油麹とは? その味、作り方、使い方&健康効果をカンタンまとめ

米麹とは? 日本の食文化を支える麹菌が生み出す「発酵の素」

麹を使った漬物としては、「三五八漬け」も有名です。糠(ぬか)を使わず、塩と蒸し米、そして麹だけで漬ける東北地方の伝統食品です。糠漬けと比べクセが少ないのが特徴で、肉や魚を漬けても食べやすいと思います。

そのほか、麹がベースになった食材を使ったレシピは、本当にバラエティ豊かです。塩麹や醤油麹はただ少し加えるだけでお料理がおいしくなりますが、さらに一工夫したくなったら、みなさんのレシピをどうぞ。発酵日和でも、料理研究家・荒木慶子さんのレシピを公開中です。

発酵日和 レシピ特集

生麹の保存方法と保存期間
生麹はその名の通り「生」なので雑菌に弱く冷蔵保存が必要で、保存期間は2週間程度です(ただし塩分量により多少の違いがあります)。
冷凍保存も可能で、やや風味は落ちますが、3ヶ月程度の保存が可能です(解凍後に再冷凍をするとさらに風味が落ちますので、ご注意ください)。
すぐに使い切れそうにないようでしたら、冷凍保存が良さそうですね。

生麹はどこで買えるの?
ここまで解説してきた生麹ですが、保存期間が短いこともあり、スーパーなど身近なお店では扱っていないことがほとんど。
でも大丈夫。生麹を購入できるお店や通販サイトをご紹介します。

発酵デパートメント
発酵日和でも取材した小倉ヒラクさんの「発酵デパートメント」は、生麹も扱っています。

五味醤油の米こうじ

大黒天糀
五味醤油の麹は生麹と乾燥麹2つの中間にあたる「半生こうじ」。常温での流通ができるよう、麹が生きたまま働きを止めている半生の状態にしたという優れモノです。水で戻す必要はなく、生麹と同じように使えます。

発酵デパートメント
東京都世田谷区代田2-36-15 BONUS TRACK内
下北沢南西口から世田谷代田駅方面に徒歩4〜5分
営業時間はこちらでご確認ください。

オンラインストアでも購入可能です。
https://hakko-department.com/collections/all/products/diy_komekoji

通販サイト
少量から購入可能なサイトもあるので、食べ比べてみるのも楽しそうですね。

大阪屋こうじ店
江戸時代創業の京都の老舗こうじ店。250gの少量から購入可能。京都産コシヒカリの生麹もあります。
https://shop.namakouji.com/?mode=grp&gid=1269631

池田屋醸造
江戸時代創業の熊本の麹と味噌の専門店。九州産米100%の生麹を販売しています。
https://www.ikedayamiso.com/shopdetail/001001000001/ct18/page1/recommend/

小泉麹屋
明治創業の横浜の麹屋。保存性を高めた「塩切済(10%の塩を混ぜたもの)」と塩が入っていない「塩切なし」の麹を扱っています。
https://www.koujiya.com/items/miso-homemade/kome-kouji/

おかめ麹
明治創業の山梨の麹メーカー。大豆・大麦・米をブレンドした香りが特徴的な生麹を扱っています。
https://www.okamekoji.shop/shopdetail/000000000067/ct5/page1/recommend/
石黒種麹屋
明治創業の富山の種麹屋。富山県産コシヒカリ一等米を使用した生麹を販売。真空パックのため冷蔵で3ヶ月保存可能です。
https://www.1496tanekouji.com/products/nama-kouji/

生麹あれこれ ブランド米・古代米・有機農法……
麹とひと言で言っても、さすが日本の伝統文化、バラエティは本当に豊かです。

コシヒカリのようなブランド米を使った麹もあります。また、有機農法・農薬不使用・国産など、お米の作り方も、各醸造家さんたちがこだわっています。農家さんたちと手を組むのはもちろん、醸造家さんが自ら農業をしたり……、まさにこだわりが詰まっています。

さらに、赤米・黒米・古代米を使ったものも多くなりました。玄米の状態で麹にしたものもありますね。白米の麹より、さらに栄養成分が豊かになりやすいのが特徴です。

そのほか、天然の麹菌を使ったもの、少し砕いた状態にして早く発酵させられるように仕込んだもの、甘みが出やすいようにし甘酒造りに特化したもの……などなど、日本各地の醸造家がアイデアと工夫を競っています。お好みの麹を見つけるのも楽しいですね。

ちなみに、麹は畑やガーデニングの肥料として使われることもあります(正確には、肥料の材料として)。

土、堆肥の中では、さまざまな微生物が働いています。特に化学肥料を使わない自然農法では、この微生物の力が重要です。微生物にさらに働いてもらうために、麹をスターターにする、というイメージです。食べ物そのものだけでなく、その生産にまで力を発揮する麹は、まさに日本の食文化を支える存在、という感じですね!

※記載内容は、取材対象者及び筆者の個人的な見解であり、特定の商品または発酵食品についての効果・効用を保証するものではありません。

発酵日和

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