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発酵文化人類学:小倉ヒラク著 美しい酒を醸すように、美しい社会を醸していこうぜ。
発酵文化人類学 微生物からみた社会のカタチ Il fermente, donne je suis.:小倉ヒラク著
「発酵のひみつ」をひとたび知れば、見えないはずの微生物たちと友だちになれる。
「微生物の視点」を借りれば、この社会のカタチが今までと違って見える。
この本を読めば、発酵の仕組みがなんとなくわかるのはもちろん、微生物と人間の関わり、僕たちが長年培ってきた暮らしの文化の奥深さ、日本人がどのように、「見えない自然と向かい合ってきたのか」というスタンス、そして美味しさや美しさを感じる人間の認知システムのカラクリなど、色んな「ひみつ」が見えてくる。
文化の本質は隠されている。目には見えない自然のシンボルである微生物たちは、隠された「ひみつ」をこっそり教えてくれるメッセンジャー。
微生物の目線で社会を見てみよう。そこには「ホモ・ファーメンタム(発酵するヒト)」が愉快に食卓を囲んでいる姿が見えるはずだ。
このお酒が美味しい!このお味噌汁が美味しい!とアナタが感動する時、そこには物理的な現象とヴァーチャルな情報が複雑に絡み合って生まれるヒトの「感性」がはたらいている。この「感性」には、アナタがどの時代、どの場所で生まれ育ち、どのような人生を送ってきたのかという「歴史」が紐付いている。
さらにヒトは各自が固有にもつ「感性」を通じて、他者とのコミュニケーションをすることができる。同じ食卓を囲んでともに料理を味わい、絆を深めることができる。
この「食卓を囲む」という、感性を通じてコミュニケーションを僕たちは「文化」と呼ぶ。
発酵とは、サイエンスに支えられた文化の作法だ。見えない自然を捉え、ミクロの生物と関係を結び、暮らしのなかによろこびを埋め込む。自然現象をじっとみつめる目があり、創意工夫を凝らして自然をデザインする手があり、生み出された価値を楽しみ分かち合う心がある。この総体が発酵文化。そして発酵文化を通してヒト(人類)の不思議を紐解くのが「発酵文化人類学」なのである。(ここで話しが最初にもどった。やっほー!)
シュワシュワしているブドウジュースに意味はない。それを人間が飲んで「美味い!」と感じた時、はじめてそこに意味が生まれる。見えない自然が引き起こす現象にヒトが意味を与えた瞬間、それこそが発酵の生まれた瞬間だ。
僕たちはいま、自然を意のままにデザインできる技術を手に入れた。
この技術は「より幸せな世界」のためのもの。そして「何が幸せか」を問うことができるのは、他ならぬ僕でありアナタだ。」伝統回帰でも破壊的進化でもない第三の道は、テクノロジーに意味を見出す新世代のホモ・ファーメンタム(発酵するヒト)の「感性」にかかっている(さもなければ、神を殺す「新しいヒト」の世紀が始まるかも)。
北から南、西から東。日本の土地の隅々に人の営みと自然の恵みが結び合わされた多様な文化が息づいている。「発酵文化人類学」の舞台になるのは、ヒトと自然がおりなす暮らしの芸術の世界。そしてその舞台の主役は、他ならぬアナタだ。アナタが手前みそを仕込むたび、また家族や友人と食卓を囲むたび、何千年も受け継がれてきたバトンが次の世代にパスされる。
美しい酒を醸すように、美しい社会を醸していこうぜ。